イビキと睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群についてグラフ旭川7月号に掲載しました。以下に一部を提示いたします。
寝ている時に「グーグーガーガー」と大きなイビキをかいている方が皆様の周りにもきっと多くいると思います。イビキは本来「寝ている時に息の通り道が狭いにもかかわらず、無理に呼吸をするためにおこる雑音」ですが、まわりの人への騒音障害となるばかりでなく、本人の慢性的な呼吸障害の原因にもなります。ひどいイビキをかくことで、体に必要な酸素が慢性的に不足な状態となり、その結果、本人の高血圧や不整脈などを引き起こすことも考えられます。もちろん、ひどく疲れたときや飲酒の後でイビキをかくことは正常の人でも良くみられることですし、そのことを過剰に心配する必要はありません。しかし、イビキのなかでも「極端に大きなイビキ」「聞きづらいイビキ」「速くてせわしいイビキ」「往復のイビキ」「時々音が止まるイビキ」などが見られる場合には危険なイビキと言えます。なぜ危険であるかというと、これらのイビキをかく人の一部が睡眠中に呼吸が止まる、睡眠時無呼吸症候群へとかわっていく可能性があるからなのです。
「睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気なのか?」 :イビキの原因である息の通り道の「狭まり」が極端に悪化し、数十秒間も続く呼吸停止が一晩の眠りの中で何度も繰り返す状態を睡眠時無呼吸症候群といいます。この状態は閉塞性の無呼吸ともいわれ無呼吸症候群患者の大部分を占めますが、ほかに呼吸運動そのものが停止する中枢性の無呼吸もあります。
睡眠中に無呼吸が何度も起こると無意識のうちに眠りが浅くなり中断されるため、たとえ睡眠時間(横になって寝ている時間)が十分に長く感じても眠りの質が悪くなり、「昼間の耐えがたい眠気」を自覚するようになります。軽いうちは昼食後や会議中の居眠り程度でおさまりますが、重症患者の場合には車の運転中に突然眠ってしまい交通事故を引き起したり、重要な仕事中であっても居眠りをするようになり、勤務を続けることが難しくなってきます。皆様の中には、数年前に新幹線の運転手がこの疾患であったために列車の停車ミスを起した報道を思い出した方もいることでしょう。ほかにも睡眠時無呼吸は、狭心性や心筋梗塞などの「虚血性心疾患」、脳梗塞などの「脳血管障害」を引き起こし、悪化させる可能性があるため、睡眠時無呼吸症候群に対して適切に治療することが重要です。
「原因」:閉塞性無呼吸の原因としては、「肥満」「下あごの形」「鼻の病気」「扁桃腺の病気」などが挙げられます。肥満体型の人では体の内側にも脂肪がつくため、ノドなど息の通り道の周辺も狭くなり無呼吸の原因となります。一方、下あごが小さい人では、舌が普通より後方に位置するため息の通り道が狭くなります。睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、やせた体型の人々に多く見られる原因です。ちくのう症(慢性副鼻腔炎)やアレルギー性鼻炎の患者では鼻づまりが強いため、睡眠中も口から呼吸することが多いようです。口呼吸をするとノドの狭まりが強くなり、睡眠時無呼吸の原因となります。同じように、子供に多い状態ですが扁桃腺が腫れているとやはり無呼吸の原因となります。他にも、寝ている時の姿勢やアルコール、睡眠薬なども睡眠時の無呼吸に影響を与える原因と考えられます。
「検査と治療」:検査は睡眠中の呼吸状態を調べることを目的としています。子供の場合には自宅での睡眠の様子をビデオなどの動画として記録すると重要な判断材料となります。特に胸の部分の動きやイビキの音声などが参考となります。大人の場合には睡眠中の呼吸停止の状態や血液中の酸素濃度の変化を記録するアプノモニターという器械を貸し出して調べる必要があります。これらの結果から、さらにより詳しい検査をする必要があるのか決定されます。睡眠時無呼吸症候群の患者に対する治療は呼吸停止の原因、程度などによって選ばれます。軽症の場合には、患者の減量が主体となるため、食事内容、睡眠中の姿勢、生活習慣の改善などの指導が中心となります。症状が強い場合には、それぞれの原因となる病気の薬物治療、眠る時に口の中に入れるマウスピースの使用、寝ている時に鼻から空気を流して息の通り道を拡げる器械を用いた治療が考えられます(n-CPAP)。これらの治療が有効でない場合には、鼻やノドに対する手術をおこなうこともあります。
イビキや睡眠中の呼吸停止は正常の人でも軽い程度であれば、よく見られる現象です。しかし、その程度が悪化すると、「日中の眠気」ばかりでなくさまざまな疾患の悪化因子にもなります。私たちは寝ている時の記憶が無いため、自分がどのような状態で寝ているのかを自覚することは難しいものです。「いくら寝ても眠った気がしない」、「日中の眠気がつらい」などの症状が気になる方には適切な検査が必要となりますので、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、睡眠科などの専門医への受診をお勧めいたします。
[ 更新:2010-06-25 18:33:30 ]